缶ビール

 以下、わたし自身は子どもだったし、酒を飲む家族もいなかったので、もしかしたら勘違いかもしれないが……、

 わたしが子どものころは缶ビールはなかった。もしかしたらあったかもしれないが、それでも普及はしていなかった。ビールといえば、瓶ビールであった。

 なぜか、栓抜きで王冠をカンカンと叩いてから、スポット栓を抜き、トクトクトクとコップ(グラスではなく、あくまでもコップ)に注ぐ。泡があふれそうになって、おっとっとなどと言いながらあわてて注ぐのをやめる。一口飲んでプハーッと息を吐く。これが典型的な飲みかた。儀式ともいえる。

 いつの頃からか、缶ビールが現れた。缶の飲みかたは瓶とは異なる。プルタブをプシュッと起こす。それだけである。あとは、缶からそのまま飲む。儀式はない。

 まあそんなこんなで、ビールを手軽に飲めるようになったが、どこか味気なくもある。

 アメリカなどでは、スクリューキャップの小瓶からの直飲みスタイルが幅をきかせているようだが、このスタイルが日本に上陸しなかったのはなぜだろう。

 てなこと、どうでもいいかとを、もっともらしくあれこれ考えながら、缶ビールを飲むのもまた一興である。ははは。