はさみ虫

 子どものころ、よく遊んだ虫はなんだろう。わたしの場合、ダンゴムシとハサミムシだろう。

 ダンゴムシはいまでも身近に見ることができる。かたちが独特だし、動作が鈍いのでゆっくり眺めることができる。コンクリートのかけらを食っているという話を聞いたこともある。いまの子どもにとってもダンゴムシはお馴染みだろう。

 今の子どもたちにとって、ハサミムシはどうだろう。昔は庭や空き地の石をひっくり返すと、ジメジメした土の上を、お尻にはさみのついたハサミムシがノソノソうごめいたり、ときには素早く走り去っていった。ダンゴムシ以上に、その姿形は独特で不気味だった。お尻のハサミに挟まれると痛かったように覚えているが、本当のところはどうだろうか。

 今の子どもたちはあまり馴染みがないかも知れない。何しろ、ひっくり返す石がない。石がなければ、ハサミムシの居場所がない。もしかしたら、ハサミムシは激減しているかもしれない。そういえば、ハサミムシの居住環境のジメジメ感も激減しているのではなかろうか。なんとなくさびしい。