昭和の夜は暗かった。

 街灯がずっと少なかった。間隔が開いていて、街灯と街灯のあいだは暗闇だった。

 個々の街灯の明るさも今よりずっと暗かった。白熱灯とちいさな銀色の笠というのが普通だった。

 たまに、乳白色のガラス玉にはいっていることもあった。この乳白色のガラス玉がなんなのかよくわからない。室内であればお洒落な間接照明となるのだろうが、街灯でそうする意味はわからない。電球の外を覆う分だけ明るさが減じてしまう。単に雨除けにしかならないだろう。

 保守も不十分。点かない電球、またたく蛍光灯もそこかしこで見られた。

 自動車もいまほどには通らない。

 店の電飾も地味。閉店時間も早かった。

 かくして、昭和の夜は暗かった。なので、怖かった。二十面相が現れても不思議はなかった。

 とうわけで夜歩いているひともいまよりずっと少なかった。なので、昭和の夜はますます恐怖に満ちていた。

 野良犬もいまより多く、怖かったし……。