缶詰

 消費税値上がりを目前に控え、買いだめ可能な商品として缶詰が脚光を浴びているとかいないとか。

 子どものころ、缶詰というものは贅沢品だと思っていた。この認識は正しかったのか、それとも誤解だったのかはよくわからない。

 そう思ったのは、普段はあまり食べさせてもらえなかったから。果物の缶詰にしろ、肉や魚にしろ、缶詰をあけるのは病気をしたときやなど特別なときだった。

 肉や魚は家庭で調理するのが当たり前。調理済みの缶詰は、(値段とは関係なく)贅沢なものだったのかもしれない。みかんや桃なら生のほうが安かっただろう。また、生のパインなどおいそれとは手に入らなかったから贅沢品とみなされたのかもしれない。

 そして、缶詰はどれもうまかった。うまいから贅沢品と思ったのかもしれない。

 その後、ときが経つに連れ、いろいろな品物がでまわるようになった。新鮮なものがもてはやされるようになり、保存食的色合いの缶詰は価値を減じてしまった。また、缶詰でしか食べられなかったものも、生で手に入るようになって、缶詰の贅沢感は薄れてきた。贅沢感が薄れると、どういうわけか価値も減じてしまうようだ。

 そんなこんなで缶詰の人気がおとろえてしまった……ような気がするがどうだろうか? そうだとして、消費税の関係からとはいえ、復活の兆しはよいことかもしれない。