獅子舞

 これを書くのはまだ少し早いが、近ごろ見なくなったもののひとつに獅子舞がある。

 正月に何回かやってきた。個々の家の前に立ち、心付けを渡すまで催促するかのように舞っていた。いや、催促していたのだ。心付けを渡すとさっさと次へ行った。あるいはもらえないわかるとさっさと次へ行った。このとき、悪態をつく獅子もいた。

 この獅子舞、笛・太鼓つきの団体もあれば、獅子だけの単体もあった。獅子単独の場合、音楽はどうしていたのか、ちょっと記憶にない。ラジカセなどない時代である。

 また、舞のうまい獅子もいれば、まったくなってない獅子もいた。ひどいのになると、口をカタカタ言わすだけの獅子もいた。

 もしかしたら、獅子頭のレンタル屋があって、まったくの素人がやっていたのかもしれない。

 この獅子舞も姿を消してしまった。むかしのような開放的な家が少なくなったこともある。クルマを気にせず安心して舞うことのできる道路が少なくなってしまったこともある。なによりも、高層の集合住宅ではやりにくいだろう。そして、正月が正月らしくなくなってしまった、ことも廃れの原因のひとつかも……。