婚前旅行――変わる言葉、変わらぬ言葉

 婚前旅行という言葉をほとんど耳にしなくなった。

 婚前旅行、つまり結婚前の男女がふたりで旅行にいくこと、が減ったわけではなさそうだ。むしろ増えているかも知れない。

 昔は、結婚するまでは、婚約者といえどもセックスをすることは道徳的ではないとされていた。結婚式後の初の交わりが重大視され、初夜という言葉があった。

 先にも書いたが、現在、婚前旅行的行為が減ったわけではなさそうだ。なのに、その言葉がなくなった理由は簡単だ。

 婚前旅行的行為がどうってことのない当たり前の行為となったからであろう。処女だの初夜だのは大切なことではなくなったからであろう。

 ついでに、婚前旅行的行為をする場所の名前も変わってきた。むかしは、連れ込み旅館と称していた。旅館には温泉マークがついていたので、さかさクラゲなどともいっていた。これもまた、そういう施設がなくなったわけではない。こちらは名前が変わっただけである。一般的にはラブホテル。略してラブホ。ときにはブティックホテルなどと呼ばれたりもする。

前提が変わってしまったために実態は残っているのに言葉が消えてしまったり、かと思うと、実態は変わらないのに名前だけが変わったり、といろいろあって面白い。