西部劇

 生まれたばかりのテレビで大きな領域を占めていたもののひとつに西部劇がある。毎日何本かの番組が放映されていた。

 ローハイド、ララミー牧場、ローンレンジャー、名犬リンチンチン、バットマスターソン、拳銃無宿、ブロンコ、ライフルマン、……。挙げれば切りがない。映画や音楽でも人気があった。

 腰に拳銃をぶら下げ、馬に乗り、インディアンや悪人と打ち合いをする。カウボーイ、騎兵隊、保安官、シェリフ、マーシャル、縛り首、早撃ち、幌馬車隊、干し肉、コルト45、デリンジャー(小型拳銃)といった言葉や「インディアン嘘つかない」といったフレーズ、ホーローのカップで飲む珈琲は日本中の共通認識とまでなっていた。

 その西部劇があるときからプッツンと消えてしまった。インディアンを悪者とする設定が問題となったらしい。

 たしかに、白人が善でインディアンが悪という、ステレオタイプには問題がある。また、やたらと拳銃をぶっ放し、殺し合う場面も問題だろう。

 〝強いほうが正しい〟という判定基準も問題あるだろうが、おそらくこれは西部劇打ち切りの原因にはなっていないだろう。

 西部劇の設定に問題があったことはわかる。だけど、だけど、ある日突然、一気に全部なくなってしまうのもおかしいことのように思われてならない。それもまた怖いことではなかろうか。