物干し

 物干し竿はいまもなお健在だが、物干し台のほうはすっかり様変わりしてしまった。

 昔は、物干し棹を収める袖木のついた高さ三メートルくらいの二本の柱が立ってるのをあちこちでみかけた。個人の庭はもちろんのこと、奥まった路地にも堂々と立ち並び洗濯物が踊っていた。

 柱に棹を上げ下げするための棹もあった。竹竿の先にY字型の木の股をさしたものや、逆〝ト〟の字型に袖木を打ち付けたり縛り付けたりした棹である。

 物干し竿のいっぽうを一段上げ、つづいて他方を二段上げ、そして最初に上げたほうを一段上げて水平にする。こんな風にして交互に一段づつ上げ下げする。

 干す手伝いはあまりしなかったが、取り込む手伝いはしょっちゅうやらされた。

 こんな物干し台や干したり取り込む光景、すっかり見なくなってしまった。