ハンケチ、ちり紙

 ハンケチ、ちり紙という言葉があった。

 ハンカチーフがハンカチと縮まり、さらに、どういうわけかハンケチとなまってしまった。いや、ハンカチーフではなく、ハンケチーフと発音するほうが原音に近いのかもしれない。チケットよりテケツのほうが原音に近いように。

 ちり紙の〝ちり〟はなんなのだろう? すぐに思い当たるのは〝塵〟だが塵と紙がどうむすびつくのやら。また、「ちりがみ」ではなく「ちりし」と発音することもあった。わたしの狭い体験では、東京では「ちりがみ」、大阪では「ちりし」が多かったように思う。ただし、交換するのはどちらも「ちりがみ」。

 ちり紙ではなく、はな紙ということもあった。こちらは「はなかみ」である。「はなし」はない。この〝はな〟は鼻でしょうね。鼻水を噛むための紙でしょう。あまり美しい命名ではありませんが。なので「花紙」と書かれることも多々あり。

 いまでは、ハンケチというひとはほとんどいない。まずは、ハンカチであろう。なかには、気障ったらしくハンカチーフというひとすらいる。こちらは、英語の(発音ではなく)綴りに従ったのだろう。あるいは、日本語として、ハンカチというほうが綺麗に聞こえるのかもしれない。

 いっぽう、ちりがみもちりしもそしてハナ紙もこちらはすべてなくなってしまった。取って代わったのは、ご存じ、ティッシュですね。こちらは、言葉云々ではなく、もの自体が変わってしまったのだから仕方がない。