ダブルブッキング

 ダブルブッキングにもいろいろあるが、今回の話題は、電車の指定券の重複発行のことである。

 同じ電車の同じ席の指定券を複数のひとに発行してしまう、ということがよくあった。これは昭和のかなり遅くまで発生していた。予約システムがコンピュータ化されようやく解消された。

 コンピュータ化以前はどうやって管理していたのだろうか? おそらくは、どこか一箇所に台帳があってそこに手書きで管理していたのだろう。予約を受け付ける際には、管理者へ電話して一つ一つ確認していたのだろう。電車の座席というのは、ある区間ではすでに予約済みとなっていても、その人が降りたあとなら、別のひとが予約することもできる。キャンセルが入ることもある。手で管理するにはかなり複雑である。だから間違い、重複発行も発生する。

 わたしも重複発行の被害にあったことは何度かある。座ろうと思ったら、既に座っているひとがいて、確認したら、ちゃんとした指定券を持っている。まさに、重複発行である。で、車掌さんに訴える。車掌さんも慣れたものである。慌てず騒がず、代わりの席を手配してくれる。時には、グリーン車に座らせてくれることもある。これはラッキー。

 おそらくは、こういう事態に備えて、予めいくつかの席が確保されていたのだろう。グリーン車はそれすらも使い果たして閉まった場合の苦肉の策かもしれない。が、さして慌てた様子も見られないのは、これもときどきはあることなのだろう。

 むろん、不手際はないに越したことはないが、なんとなく人肌の温もりが伝わってくるような気もする。〝過ぎてしまえば〟の前提つきかもしれないが。