文通

 当然ながら、昭和の御代にはメールもブログもツイッターフェイスブックもなかった。代わりに使われたのが手紙である。〝文通〟という交際があった。

 といっても手紙でつながることはそう簡単ではない。ネットの世の中のように、不特定多数へ発信するわけにはいかない。

 紹介を目的とする専用の雑誌があったり、それ以外の雑誌でも文通希望者のコーナーなどがあってそれを手がかりとして相手を見つけた。

 それ以上に多いのが、友達の輪である。すでに文通をしている友達の文通相手に紹介してもらう。こうして輪が拡がっていく。

 これは国内に限らず海外も同様である。英語で文通をしたいと思う人、文通している人も大勢いる。英語の勉強を兼ねた海外文通をやるひとも少なくなかった。

 実は、わたしも友達の紹介でスウェーデンの同年配の少女と文通していた。で、大いに困った。趣味やら家族やら自己紹介してしまうと、書くことがない。日本のことを書こうとしても日本を知らない。で、なんかつまらんことばかり書いて、あまり得るところはなかった。むろん英語も上達しなかった。まあ、日本を知らない、自らを語れない、ということを実感したのは収穫だったのかもしれないが。

 いまのネット社会では、もっと狭い趣味の世界に特化して、もっと気楽にディープな話をしているのだろうね。たぶん。