空き缶

 最近あまり見かけなくなった遊びのひとつに缶蹴りがある。なぜだろうか。遊びの好みが変わってきたこともあるだろうが、それよりも大きな原因がある、と思う。

 それは、空き缶が少なくなってきたこと。空き缶がなければ缶蹴りはできない。これが最大の原因ではなかろうか。

 空き缶が減ったということは缶詰の需要が減ったということであろう。缶蹴りに使われるのは丸くて中振りの缶。ミカンやモモ、パイナップルなどの果物の缶がもっぱら使われていた。

 さて、どうだろう。近ごろ、これらの缶詰を食べたことがあるだろうか。わたしはここ数年どれも食べていない。

 果物の缶詰の需要が減ったわけは、多分、生でこれらが食べられるようになってきたからではないだろうか。

 いや、昔でも、パイナップルは難しいが、ミカンやモモは生で食べることは難しくはなかった。でも、缶詰も食べた。

 それは、缶詰のほうがごちそうであったから。あまいシロップに浸かった果物はたしかにごちそうだった。どういうわけか知らないが、そうだった。甘さそのものが贅沢だったのかもしれない。

 いまは、缶詰よりも新鮮な生の果物のほうが好まれるのだろう。そして、それらが容易に、しかも安く手にはいるようになってきた。

 また、缶詰の利点であった保存性も、冷蔵庫・冷凍庫の普及により、さほど有利でもなくなってきた。

 缶詰が減ってしまうわけだ。なので、缶がなくなり、したくとも缶蹴りができなくなってしまった。

 余談だが、果物ではないが、白アスパラガスの缶詰も、グリーンアスパラに押されているように思われる。そういう時代なのだろうか。