段差のあるトイレ

 おそらくは団地(公団アパート)で始まったのだろうと思われるが、不思議な形態のトイレがあった。

 トイレの中が二段構造になっている。奥半分ほどが15センチだか20センチだか高くなっている。その高くなったところに和式の便器が設置されている。便器のうしろは段から少しはみ出している(オーバーハングしている)。これはなんのためであろうか。

 しゃがむときは段の高いほうに上がって便器にまたがる。立ってするとき、すなわち男子小用は段の下に立って行う。つまり、放水口と便器とがほんの少し(段差の分だけ)近づき粗相が少なくなる工夫であるらしい。

 この形状は広まりましたね。朝顔のあるところは別として、大小兼用の和式トイレの大半はこれを採用したのではないだろうか。戸建て住宅でもよく見かけた。

 さて、その効用は如何に? 本来の狙いが満たされたかどうかはわからないのだが、脚や腰を痛めたときに、洋式便器のように、すなわち和式便器の上に後ろ向きに座ったことはある。洋式と違って浅いので跳ね返りの問題があったり、直接便器に触れるという清潔面でためらいはあったが、痛みには換えられなかった。いまでは笑い話になってしまったが……。