美男美女

 かつては、美男といえばアラン・ドロン。むろん、ほかにも美男美女は多数存在したが、それでも、美男の代名詞はアラン・ドロンと決まっていた。アラン・ドロンの顔を知らなくとも、アラン・ドロンが美男子であることはだれも知っていた。それが(日本人の)共通認識であった。

 現在はひとりで美男・美女を背負って立つようなスターはいない。キムタクだ、デカプリオだ、ペ・ヨンジュだといっても、かれらはそこそこであって、絶対唯一の美男ではない。顔は勿論、名前すら知らないひとも少なくないだろう。共通認識にはなっていない。

 これは絶対的なスターが不在なのか、それとも多様化の現れなのだろうか。かつてのほうが全体主義に近かったのかもしれないが……。全体主義は怖いけれど、共通認識がないのはさびしい気もする。