神棚

 我が家にはなかったけれど、小さな神棚は普通に見られた。部屋の角の鴨居に板を乗せ、壁から斜めに支柱を張って板を支える。板の上には扉のようなご神体と御札。その前に御神酒徳利のような陶器。そしてシダのような葉っぱや稲妻型の紙がお供えされている。それにしても神様を祀る品の名前がわかっていませんねえ、わたくしは。

 そんな神棚が普通に見られた。神棚のある部屋にはたいがい仏壇もあった。神仏共存である。仏壇は茶箪笥のような背の低い箪笥の上に置かれている。なぜか神様のほうが高いところにいたようだ。日々のお願いや感謝は神様に、そして先祖の霊は仏様に、といった具合にうまく棲み分けができていた。

 いまはどうだろう。仏壇は健在のようだ。先祖、とりわけ見知った親や祖父母をないがしろにはできないからだろう。

 いっぽう、神棚のほうはほとんど見かけなくなってしまった。仏壇のように具体的な身内を祀るものではないので、なくても気にならないのだろう。それもあるけれど、いまの建築では神棚を置く鴨居がなくなってしまった。余談だが鴨居がないと蚊帳をつるのも大変だろう。なので、蚊帳も神棚もなくなってしまった。