あぶらむし

 アブラムシはアリの子分のような小さな黒い虫で、植物に群れ、密を吸う。植物をダメにする害虫である。天敵はテントウムシ。アリは密欲しさにアブラムシを守る。

 ところで、かつて、これとはまったく別のアブラムシがいた。油虫。ゴキブリのことをこう呼んでいたのだ。おそらくは、黒光りするゴキブリの甲があたかも油引きしたかのように見えるからこう呼んだのであろう。

 近ごろはゴキブリはあくまでもゴキブリ。ゴキブリのことを油虫と呼ぶひとはほとんどっみかけなくなってきた。なぜだろう? 

 学術的に正確を期すようにな風潮になってきたのだろうか。いや、そんなことはないなあ。語彙が減ってきただけなのかも。

 あるいは、同じ名前の虫が二種類いると、いま言われているのがどちらのアブラムシなのか、判断する力が衰えてきたから、曖昧な語を避けるようになってきたのかもしれない。こちらのような気がする。つまり、曖昧な状況の判断力が落ちてきたのではなかろうか。それで、誤解を招かぬよう、同じ言葉を避けるようになってきたのだと。

 曖昧さが減るっていうのは良いことなのかどうか、わかりにくいことだが。