小包

 いまでは小包と言う言葉自体廃れてしまった感がある。宅急便/宅配便が始まって、荷物を送るのが画期的に楽になった。

 かつては木箱が主体であった。段ボールはまだ普及していなかった。みかん箱もリンゴ箱も木製であった。この木箱に荷物を詰め、フタ(もちろん木製)をしめ釘付けする。さらにこれに荒縄をまく。荒縄は持ちやすさのためと、木箱が壊れたときの飛散防止のためであろう。木箱にあて名を書いた紙を貼ると共に、荷札を二枚荒縄に縛り付ける。荷札にもあて名を書く。フタの開け閉めのため、大概の家庭には金槌と釘抜きが備わっていた。いま金槌はともかく、釘抜きを持っている家庭はどれくらいあるだろうか。

 段ボールが出回るようになっても基本は同じ。段ボール箱に荷物を詰め、その段ボール箱を丈夫な紙で包む。そして麻縄をかけ、荷札をつける。

 そしてこの箱を日通の取扱所まで持っていく。取扱所は大概鉄道の駅にあった。マイカーなど夢のまた夢の時代、また、キャスター付きのキャリアーなどない時代。荷物は手に持って運ぶ。重たくて持てないものは、どこかでリアカーを借りこれに乗せて運ぶ。いやはや、大変な時代だった。

 宅配便の取扱店はあちこちにあるし、頼めば取りにも来て切れる。荷物は段ボール箱に入れ、ガムテープで封をするだけ。包み紙も要らなければ麻縄も不要。荷札も要らない。

 さらにインターネットが普及し、買い物もネット上でできる時代になった。こうなると、宅配便とクレジットカードの役割が大きく上昇する。便利さと共に、世の中の動静も随分と変化している。