子どものころの外国——アメリカとフランスだけ

 わが少年時代、外国は遠い遠い存在だった。満州を除いては外国へ行った人もいなかった。テレビとか映画雑誌で見るばかりであった(子ども故、外国映画そのものは観ていない)。

 で、そんな子どもにとって外国といえば、まずはなんと言ってもアメリカ。これはテレビに出てくる外国はアメリカしかなかったから。

 そして、その次はフランス。

 これだけである。アメリカとフランスだけ。豊かなアメリカに対して子洒落たフランス(というよりパリだけかも)。

 欧米以外は外国ではなかった。当時の共産圏も外国ではなかった。

 その欧米でも、アメリカとフランスだけである。

 イギリスもドイツもイタリアも北欧諸国もアメリカの影に隠れてしまっている。フランスというかパリだけがアメリカとはひと味ちがう、というかアメリカよりずっと洗練された外国として目立っていた。

 どう見ても偏っている。

 この偏りを減じたのが、まずは宇宙開発でアメリカと覇権を競ったソ連アメリカ以外にも優秀な科学を持った国があることを知った。

 そして、なんといっても、世界には色々な国とひとがいることを知らしめたのが東京オリンピックである。豊かな国際色なんて言葉は、東急オリンピックまではなかったのではなかろうか。

 むろん、上記は子どもの感覚である。が、大人だって似たようなものかもしれない。むしろ敵国であったがために、かえってなじみづらかったかもしれない。