身近な死

 こういうときにこういうことを考えるのは不謹慎かもしれない。でも、考えてしまった。

 それは、かつてはいまよりも「死」が身近にあったような気がすること。

 かつては、ちょくちょく死の報を耳にした。葬儀に参列することも今より多かったように思われる。病気はもちろんのこと、不慮の死も少なくなかった。交通事故、工場の事故、台風では川に流され、田んぼを歩いて野壺にはまり、海や川でおぼれたり、……

 昔の小説を読んでいてもよく人が死ぬ。「赤毛のアン」でいきなり父親の死にでくわしたときに、このことに気がついた。

 むかしは死がもっと身近にあった。いま、死に接する機会が減ったのはなぜだろう。長寿になったから? それなりに事故が減っている? 核家族になり、身近な人そのものが減ったから?

 いやいや、もしかしたら、単なる気のせい。そんな事実はありはしないのかも。