胸ポケットに萬年筆
今年も早いもので既に三月。もう少しで四月になってしまう。四月といえば入学シーズン。新入生には入学祝い。かつてのお祝いの二大定番といえば、萬年筆と腕時計。どちらも安いものではない。
さてその萬年筆だが、当時は誇らしげに上着の胸ポケットの指すひとが多かった。ワイシャツの胸ではなく、上着の外側の胸ポケットである。
学生服(ランが〝乱〟に結びついてどうしてもガクランとは言えない)の胸ポケットはともかく、背広の胸ポケットに指しているひとも少なくなかった。パーカーの矢羽根のクリップなどはかなり誇らしげに輝いていた。ペリカンもクリップも特徴があるが、そうと気がつくひとはそう多くはなかった。
さすがに今そんな格好をしているひとはまずみかけない。萬年筆が廃れたことだけが変化の原因ではなさそうだ。萬年筆を駆逐したボールペンも多くはクリップ付きである。これを使っているひとは無数にいる。だが、上着の胸ポケットに指しているひとはまずいない。大概は内ポケットもしくはワイシャツの胸に指している。
この変化はどこから来ているのだろうか。機能性? お洒落センス?
まあ、萬年筆は高価だから見せびらかしたい、といのもあったかもしれない。一本百円のボールペンではそうはならない。
そのうち、ボールペンも携帯電話、か、なにかに、駆逐されてしまうのだろうか