サロメチール
どこからかメントールの匂いが漂ってきた。それで思い出したのがサロメチール。ちょっと時期はずれの話題ではあるが。
かつての運動会に徒競走という種目があった。〝徒競走〟の命名の由来は知らないが、一般的な言い方をすれば短距離走である。気になる個人種目だった。それぞれが速く走る工夫をした。
まずは靴。いまならアディダスが良いの、ナイキのほうが早いの、アシックスが軽いの、といった比較になるのだろうが、当時は少し様子が異なっていた。
どの靴を履くかではなく、靴を履くか否かの選択であった。靴は必然ではなかった。靴の他になにがあるか。とうぜん下駄ではない。まずは、裸足があった。そして、地下足袋というのがあった。このうちどれを採るかの選択である。
それが済むと足の手入れである。ここで登場するのがサロメチール。メントールの香りプンプンの軟膏である。これを走る前に塗る。ふくらはぎや太ももに丁寧にすり込む。
果たして効き目があるのかどうか。今になって思えば、この薬は走った後のアフターケアを目的としたものだったのではなかろうか、と思うのだが、どうだろう。
走る前に塗れば、なんとなく筋肉が引き締まるような感じがする。多少はそういう効果もあるだろうけれど、それが速く走る手助けになるかというと、どんなものだろう。
いまでも信じて塗っているひとがいるのだろか。いやいや、そもそも、メントールのそんな薬がいまでもあるのだろうか。ちょいと気になる。サロメチールはいまだ健在なりきや?