電気こたつ

 前話で昔の暖房として電気炬燵については触れなかった。忘れていたわけではない。寒さに震えていた子どものころには、電気炬燵はまだ普及していなかった。

 しばらくして登場するとあっという間に普及してしまった。そりゃそうだろう。火鉢に比べれて圧倒的に暖かい。安全性も高い。掃除や手入れも不要。良いことづくめである。唯一の欠点は、一旦入ったら出たくなくなること。

 われらの時代の下宿生活の必需品の筆頭だった。これがあれば机代わり、食卓代わりにもなり、むろん暖房にもなる。天板をひっくり返せば麻雀もできる。要らないときは立てかけておけば場所も取らない。こんな重宝なものはない。

 その電気炬燵だが、最初から赤外線だったのだろうか。最初はニクロム線だったような気もするが、記憶は定かではない。というより、当時はまだ幼少のみぎ、そんなことはわからなかっただろう。

 もし、ニクロム線だったとすれば、これは甚だ危険な代物だっただろう。なにしろ綿の中に熱源があるのだからたまったものではない。が、炬燵が原因で火事が発生したことは少なくはないが、ニクロム線だったらそんな程度ではなかっただろう。ということは最初から赤外線だったのだろうか。

 電気炬燵は赤い光を発し、いかにも暖かそうに見える。ところが、赤外線というのは目に見えぬ光線で決して赤くはない。電気炬燵を赤くしたのは、運転中であることを知らせるためだったようだ。どうせなら、暖かく感じる赤色がよい。赤外線の色が赤と勘違いしているむきも少なくないのだから。この着想は大ヒットでしょうね。

 そうそう、地域によってワット数が違っていたようだ。東京で買った炬燵は400Wだったけれど、少し暖かい大阪のは300Wだった。

 ところで裏を返せば麻雀のできる天板。いったい、いつだれが考えたんでしょうね。完全に定番化したが、創始者の名前を聞いたことがない。