麦わら帽子

 頭が蒸れるので帽子はあまり好きではない。とりわけ帽子が必要とされる炎天下は蒸れが激しく被る気にならない。

 そんなときに百円ショップで麦わら帽子を見つけた。ものは試し、百円なら良いかと買ってみた。因みにこの帽子、女児用(女性用ではなく女児用と書かれている)なんだが、どういうわけかピッタリなサイズである。布製に比べて蒸れは少ない。

 ところがこの帽子、サイズはピッタリでしかも、ぐいぐい押し込んでいるにもかかわらず、ときおり風でスポット脱げてしまう。脱げる方向は決まって後ろである。前に飛んだことは一度もない。

 子どものころは当たり前のように被っていた麦わら帽子を久しぶりに被り、忘れていたことを思い出した。当時もよく吹っ飛んだ。なので、帽子には必ず顎ひもが着いていた。もちろん飾りではない。帽子が脱げるのは仕方がないとして、脱げても吹っ飛ばないようにあごひもは必ず装着しなければならない。ところが百円ショップの帽子には大切なあごひもがついていない。

 脱げた帽子は地面を見事に転がる。絶妙なバランスでクルクル転がっていき、なかなか追いつけない。でもどうしてこんなに見事に転がり続けるのだろう。軽いから?

 転がるのを見て笑っているわけにはいかない。結構危険なのだ。帽子を追いかけて車道へ飛び出すのはもちろんだが、帽子が車道を転がると除けよう、引くまいとして急ハンドルを切ったりや急ブレーキが踏まれることもしばしば。事故に繋がりかねない。

 帰って早速、麦わらの隙間にリボンを通してあごひもを着けた。