物干し

 今では戸建て住宅、集合住宅を問わず洗濯物はベランダに干すのが普通のようだ。下にコンクリートの錘のついた物干し台も売られていたが、ベランダ派に圧倒され、すっかり影をひそめてしまった。

 戸建ての場合、昔は庭先に柱を二本立て、大概は三段ほどに物干し竿を描け洗濯物を干していた。

 この二本の柱をなんと呼んだか、物干し竿を上げ下ろしするための逆〝ト〟型の竿をなんと呼んだか、どちらもさっぱり思い出せない。上げ下ろしに失敗して、洗濯のやり直しなんてこともたまにあった。

 昭和の写真集などでも、この洗濯干しの光景はあまり見かけることがなく、その呼び名も忘れ去られようとしている。忘れても特段差し支えはなさそうだが、過去に実際に携わった時間まで取り上げられてしまうような気がして、こころ穏やかならず。