原動機付き自転車

 オート三輪と同じように、かつては普通に見かけたのに近頃とんと見かけなくなったものはたくさんある。そのひとつに原動機付き自転車がある。そんなもの頻繁に走っているじゃないか、と言いなさんな。かつてのそれといまのそれとは名前が同じだけで仕組みはまったく別物でござる。

 現在の原動機付き自転車は「原付」「原チャ」と略され、50cc以下のオートバイやスクーターを指すのが普通になっている。原動機のついた自転車ではなく、最初から原動機を備えた完成された製品である。

 かつては、文字通り原動機(エンジン)のついた自転車が売られていた。エンジン付きの自転車として作られたものもあるが、既存の自転車に搭載できるエンジン・キットも売られていた。初期のホンダ・カブもこれではなかっただろうか。

 構造をじっくり眺めたことはないので、足でこぐペダルとエンジンとがどう共存していたのかはよくわからない。いささか残念なり。

 密閉度がよくないのか、ガソリンくさい匂いがしていたことは記憶に残っている。

 「バタバタ」の愛称通り、小さい割には大きな音がしていた。

 下りはフリーホイールで、平坦なところはペダルをこいで、そして上りはバタバタを駆動して、と使い分けて運転する人が多かったような気もする。連続運転に耐えられなかったのか、あるいはガソリンの浪費をさけるためか、それとも機械の消耗を防ぐためか、その理由はよくわからないが。環境への配慮ではなかったことはほぼ間違いない。

 かなり普及していたバタバタだが、一体いつ消えてしまったのだろう? 現在の原付の元祖といわれるスーパーカブに取って代わられたのだろうか。うーん、覚えていない。ラッタッタのスクーター(商品名失念)が出回ったころにはすでに消滅していたように思われる。

 バタバタの仕組みは、現在の原付ではなく、電動アシスト自転車に引き継がれているのかもしれない。