停電

 昔はしょっちゅう停電があった。一瞬にして街が暗くなった。台風の時はほぼ確実に電気が止まり、真っ暗な部屋で大きな不安に包まれていた。

 テレビ電波の乱れはそれ以上にあった。良いところでシャーッと言う音がして画面が縞状なって見えなくなってしまう。その縞を紙に書き揺らしながら揺らしながら写して故障と勘違いさせるようなコントもあった(クレージーキャッツの「大人の漫画」)。

 路上ではエンジンのかからない車もたくさん見かけた。みんなで押しがけしたり、クランクシャフトで回しがけしたりしていた。そういえばクランクシャフトはまったく見かけなくなったなあ。

 とまあ、正常に運ばないことがしょっちゅうあった。舌打ちはするものの、半ば仕方ないとあきらめ、修復に努めたり辛抱強く待っていた。考えてみれば、どうしておおらかなものである。時間もゆったりと流れている。

 今の時代、同じような不都合が起こったら大変なことになる。とりわけパソコンの停電は大問題。データがふっとんでしまう。停電はないけれど、コードに足を引っかけて電源ケーブルを抜いてしまったり、ノートのバッテリー切れでデータを失った経験も一度はお持ちであろう。昔のように大らかではいられない。