空からビラ

 子どものころはよく見かけたのにこの頃はすっかり影を潜めてしまったものはたくさんある。そのうちのあるものは懐かしい光景として、本やテレビなどで取り上げられるが、あるものは話題にものぼってこない。話題にのぼらない事柄の中には意図的に抹消しよう、忘れてしまおうとされているものもある。そうではなくて、本当に忘れてしまわれたらしきものも多々ある。

 忘れてしまわれたらしきもののひとつとして、空から降るビラがある。子ども頃、やや大きめの店の新装開店やら大売り出しなどがあると空からビラが降ってきた。置いてあったビラが風に舞ったわけではなく、小型ヒコーキでまいているのだ。ときには何枚もの紙がくっついたままドサッとおちてくることもあって、これを手に入れるのも喜びのひとつだった。このビラのことを話題にしたり懐かしがったりする場面には遭遇したことがない。本当にみんな、忘れてしまったのだろうか。

 そのビラまきがいつの日かピタッと消えてしまった。いまなら公害うんぬんと言われるだろうが、公害という言葉が出回る以前に消えてしまったように思われる。

 一体どうして。不景気のため? そう言えばコストはどれくらいかかったのだろう? 街頭でティッシュを配るのとどれくらい違うのだろう。

 こう書いて気がついたのだが、現在が人手によるティッシュ配り、昔がヒコーキからのばらまきということは、昔のほうが宣伝に金をかけ、また機械化を取り入れていたという面白いねじれ現象がここに見られる。

 そういえばアドバルーンもなくなりましたなあ。