鉛筆の値段

 小学生の頃(昭和三十年代)、鉛筆の値段は一本十円あるいは五円だった。三菱鉛筆トンボ鉛筆は十円、地球鉛筆は五円、コーリン鉛筆はどっちだったか。

 中学、高校時代も同じだったが、地球鉛筆、コーリン鉛筆を見かけることは少なくなったように思われる。高級鉛筆のモノやユニも出始めたが縁がなかった。

 大学生になり、さらに社会人になり、鉛筆を使う機会はほとんどなくなった。仕事ではシャープペンシルとボールペン、私的な書き物には萬年筆を使うことが多かった。

 そんなある日、理由は忘れたが鉛筆を買いに行って驚いた。なんと一本百円もするのだ。高級鉛筆のモノやユニではなく普通の鉛筆が百円もするのだ。

 まあ、よくよく見渡せば、鉛筆ばかりが特別な値上がりをしていたわけではない。多くのものが同様な値上がりをしているのだが、継続的に買っているものは、ちょこちょこ小幅な値上がりを繰り返して同じような値上がり率になっているのだからさほど気にならなかった。

 ところが鉛筆に関しては、十年以上の空白期間をはさんでの比較なので、一気に十倍の値上がりと受け取ってしまったのだ。

 あいだを抜かしてしまったわたしが悪いといえば悪いのかもしれないが、いっぽうでジワジワ小幅な上昇が繰り返されることには注意が必要だ。感覚麻痺させていつの間にか大幅な上昇を受け入れさせてしまう。かなり危険だ。これもまた“継続は力ない”の変形であろうか。