幼稚園

 昨年三歳になった孫がこの四月から幼稚園の三年保育コースに通っている。その親であるむすこは二年保育。さらにその親のわたしは一年保育を受けた。

 わたしの時代、これは地域性もあるかもしれないが、皆がみな幼稚園へ行ったわけではなかったようだ。

 いまのように(皆がみな幼稚園に行くので)幼稚園に行かなければ友達と遊べないということはなかった。地域の年長の子どもたちが小さな子の面倒を見ていた。幼稚園や学校つながりよりも、地域つながりのほうが大きかったような気もしている。

 横道にそれるが、わたし自身が小さな子たちの面倒をみた記憶はあまりない。記憶にないだけなのか、本当に面倒見なかったのかは定かではないが。もし、面倒をみなかったとして、それは個人の問題なのか、時代がそう変わってきたのか、あるいは引っ越しによる地域性の違いなのか。

 それはさておき。幼稚園の記憶もほとんど残っていない。辛うじて幼稚園の名前を覚えている程度。どこにあったのか、どうやって通ったのか(もちろん通園バスなどなかった)まったく覚えていない。先生の名前も覚えていない。友達の名前もわからない(近所で遊んでいた子はいなかったかも)。毎日やっていたことはもちろん、運動会や遠足のこともまったく思い出せない。そうそう、卒業写真には下駄履き姿で写っている。下駄履きで幼稚園に通っていたのだろうか。

 この物忘れの激しさは、わたしの記憶力の問題なのだろうか。あるいは、幼稚園が軽んじられていたことによるものなのだろうか。

 いずれにせよ、いまよりも“横並び”の風潮が少なかったことは確かである。というよりも自分のことで精一杯でひとのことまで構っていられなかったのだろう。それが良い時代なのかどうかは別として。