物干し台

 屋根の上の物干し台、いまではほとんど見かけなくなった。

 この物干し台、二階の窓から行き来できるものも見かけたがそれは例外的な構造。平屋の屋根の上に造り専用の階段をつたって上るのが一般的。

 二階が在ればそこに洗濯物を干すことができるし、あるいは、庭があればそこに物干し台をたてて洗濯物を干すことができる。ところがそのどちらも叶わぬ家が大半だった。つまり庭のない平屋建てが多かった。それでは洗濯物を干す場所がないので、屋根の上に物干し台をつくるようになった。

 この物干し台、遠くが見えたり、星や月が見えたり、けっこうロマンチックな場所でもあった。

 そんな物干し台もこのごろはとんと見かけなくなった。庭のある家がふえたのだろうか。いやいやけっしてそんなことはない。平屋が減ったのだ。土地のないところでの平屋建ては相当に贅沢なものである。土地を有効に活用するなら二階建て、あるいは高層集合住宅となってしまう。ということで物干し台の出番がなくなってしまったのだろう。かくしてロマンチックな光景がひとつ消えてしまった。