マナーは昭和より平成

 子どもの頃、道を歩いていてしょっちゅうガムやら犬のウンコを踏んづけた。ほんとうにしょっちゅうである。

 ということは、そこら中にガムが吐き出され、犬がウンコをしていたことになる。確かに噛んだあとのガムをそのまま平気で道に吐き出すひとが多かった。テレビのコマーシャルで“ガムを噛むときは包み紙をポケットに残しておき、捨てるときはその紙で包みましょう”なんてやっていたがあまり効果はなかったようだ。いや、そうすることが格好良く見えるからと実践しているひとはいた。だけどそれが当たり前とはならなかった。

 犬のウンコの始末をするひとなんて皆無であった。煙草の吸い殻をそのまま捨てて、靴でもみ消すのも普通の仕種だった。痰も吐き捨て。いや、駅など、痰壺なるものが置かれているところもあった。

 それがいつのころか、ガムは紙に包まれ、犬のウンコはちゃんと持ち帰るようになってきた。煙草はもうひと息かな。それでも路上喫煙そのものが減っているし、灰皿を持ち歩くひとも少なくない。ただ、自動車の窓から吸い殻(大概は火がついたまま)を外に捨てるひとはまだまだいる。

 痰を吐くひともあまり見かけなくなった。ただし、これはマナー云々ではなく、日本人の体内で痰が生成しにくくなったことによるのかもしれない。痰そのものが減ったような気がする。

 これらに関しては、いつの間にか公共マナーが向上してきた。うれしいことである。平成のほうが昭和より良くなった点の筆頭にあげられることかもしれない。