百科事典、文学全集

 昭和の時代、応接間というのが流行った。床は板敷きで(フローリングという言葉はなかった)、ソファやサイドボードなど置いていた。サイドボードには(ゴルフの)トロフィーやら洋酒セットなどが飾られていた。どこでも同じようだった。

 硝子戸つきの本棚も置かれていた。棚には文学全集や百科事典が収まっていた。読むためではなく、かざるための本というものがあった。大判で分厚く、箱入り、金文字、革装など見栄えが肝心だった。

 古書店で見栄えの良い本を入手し、応接間に収める商売まであったとか。それが理由で当時は百科事典や全集に値がついていたのかもしれない。いまではすっかり安くなってしまった、というより買い取ってもらえなくなってしまったが。