仁丹
昭和の大人はポケットに仁丹を偲ばせているひとが多かった。専用のケースから二粒、三粒降り出して、ぽいっと口に放り込んでいた。父が買ってくるのか、わが家にもひとつふたつ仁丹ケースが転がっていた。中身が入っているのでときどきご相伴にあずかっていたが、うまいものではなかった。
仁丹を口にいれるのは、時も場合もわきまえない。いつでもどこでもOKだった。学校の先生は授業中でもぽいぽいしていた。
で、なんのために仁丹を口中で転がしていたのだろうか。口が寂しいから? 口臭対策? 眠気対策?
よくわからない。そんな効用は宣伝でもうたわれていなかったような気がする。
現在のフリスクなんかは仁丹の系統なのだろうか?