踏切番

 むかしは、踏切には踏切番という遮断機を開け閉めする人がいた。言い換えれば、踏切は人力で開閉していた。

 大きな交差点の真ん中には朝礼台みたいな台があり、そこにホイッスルをくわえた巡査が立ち、きびきびとした身振りで交通整理を行っていた。ここでは、信号は人力であった。

 都電の分岐部には高い塔があり、そこからポイントの切り替えを行っていた。都電は人間の判断によって行き先が変わった。

 都電やバスには、首から大きな革鞄をぶら下げた車掌さんが乗っていた。乗客は車内で車掌さんから切符を買い、降りるときにはその切符を車掌さんに渡していた。また、ドアの開け閉めや、バックの誘導も車掌さんの役割だった。

 今の時代、踏切はすべて自動、信号もすべて自動。都電は荒川線だけになってしまった。広島や長崎などでは路面電車が走っているが、ポイント切り替えはどうしているのだろうか? バスも荒川線もワンマンになっている。乗車賃の受け取りもドアの開け閉めも運転手さんが一人でやっている。

 この合理化ははたしてよいことなのだろうか。運行側からすれば良いことなのだろう。では、サービスを受ける側にとってはどうなのだろう? 現状を受け入れるばかりで、あまり深く考えられていないような気がする。