学生帽

 めっきり見なくなったもののひとつに「学生帽」がある。わたしが現役の頃には、それを被ることを強要されていたのだが、いつのころからかまったく見かけなくなった。

 あの帽子は詰め襟の学生服につきものだったが、詰め襟がブレザーに変わったり、はたまた制服そのものがなくなってしまったために廃れたのではなさそうだ。詰め襟がまだまだ全盛だったころからすでに消滅していた。

 そもそも、帽子嫌いのわたしはなんであんなものを被らなければならいのか疑問を感じていたが、その疑問は未だ解けていない。

 実用性からははなはだかけ離れている。特に夏は苦行ですらある。冬に暖かいものでもない。

 お洒落も面からも見向きもされない。

 ステータス、というより自己顕示欲を満たすこともあるかも知れないが、それはごくごく少数だろう。むしろ数の上では自ら誇ることのできない(恥ずかしく思う)ことのほうがはるかに多いのではないだろうか。

 補導のしやすさを挙げていた教師もいたが、それは強弁だろう。そもそも補導されるような生徒はわざわざ帽子を被らない。

 まあ理由はとも書くとして、学生帽を被らなくて済む学生さんをうらやましく眺めている。