冷蔵庫の鍵

 昭和の冷蔵庫には鍵がついていた。

 が、鍵を掛ける目的がよくわからない。

 冷蔵庫によっぽど貴重なもをが容れることが想定されていたのだろうか。といってもわざわざ他人の家に押し入って冷蔵庫の中身を失敬しようなどとは思わないだろう。泥棒なら冷蔵庫の中身よりも現金やら貴金属を持っていくだろう。

 ということは、家族から冷蔵庫の中身を守るため。むしろこっちのほうが考えられる。ひとり一個の割り当てがあったり、勝手に食べられては困るお客様用の品があったりするかもしれない。でもねえ、鍵を掛けるほどかなあ。

 それとも、食べては危険なものが入っていたのかもしれない。たとえばビールやお酒。これを子どもが飲んでは危険だから。多少は説得力があるけれど、「これだ!」というほどではない。

 いくつか類推してみたのだが、どれも決め手を欠く。また、思いついた原因はどれもいまでも変わっていない。だけどいまの冷蔵庫には鍵はついていない。ということは、別の理由があったのだろうな。それはなんだろう? うーん、わからん。

 観点を変えてみるか。

 中身を取られることを防ぐためではない鍵の用途も考えられる。それは、誤って冷蔵庫の中に入らないようにするため。シュールだねえ。冷蔵庫の中に入ったところ扉がしまったら出ることがでいない。寒さと酸素不足でで命が危ない。このような事態を防ぐために立ち入り禁止の意味で鍵がついていたのかも。

 もっとも、子どもが入れるほど大きくて空っぽの冷蔵庫は無かっただろうが。まてよ、廃棄された冷蔵庫ならありうるかも。だけど、廃棄されたあとのことを考えてわざわざ鍵をつけるだろうか。だいいち廃棄する冷蔵庫の鍵を保管し、かつ忘れずに施錠するだろうか。

 うーん、わからん。真の理由を知りたくなってまいりました。