金魚鉢

 かつて、金魚鉢といえば巾着型、すなわち、丸い形で上がすぼまり、それからまた花びらのようにひらひらと拡がる形をしたものが一般的だった。球形はレンズの効果で中の金魚を大きく見せる効果もあった。

 ところが近ごろでは、水槽といえば、皆が皆、四角いものばかり。丸いものはとんと見なくなってしまった。中のさかなを大事に育てるには、空気の補給や、糞やゴミの回収、そして温度調整などをしたほうがよい。そのためには巾着型の金魚鉢は不適当。また、四角いほうが棚への収まりもよい。

 それどころか、「水槽」ばかりで、「金魚鉢」という言葉自体を耳にしなくなってしまった。

 その名前とともに巾着型の金魚鉢は風情があるのだが、さかな本意に考え、さらに住環境を考えれば、すたれても仕方がないのかな。ちょっとさびしい気がするが。

 収まりが悪いからこそ確固たる存在感があり、魚にとって辛い環境だからこそ生命のはかなさ、季節の移ろいが伝わってくる…。と、言ってしまっては言いすぎだろうか。